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俺は部屋から廊下に出た時に一瞬違和感…いや、既視感を感じた。
どこかで見え覚えがある気がしたけど…、病院の白い壁や無機質な感じに似ているだけか…‥。
早く礼旺を見つけないと。
「右と左…どっちに行くべきか…」
迷路で迷った場合は左手を壁に沿って行けばいいって聞いたことがあるから左にするか?
ーーガチャっ
俺の右隣の部屋の扉が唐突に開いて、中から人が出て来た。
「え……?」
その人物に俺は思わず目を丸くした。
見慣れた女子高生の制服に今日会ったばっかりの顔。
「灰戸(ハイド)さん?」
「…ニーナ君?」
彼女も驚いて大きな瞳を更に大きく見開いていた。
「良かった…!知ってる人がいて!」
わっと彼女は俺の元に駆け寄ってきた。
うわぁ~!か、可愛い!こんな満面の笑顔を向けられて惚れない男なんていないって!
右腕を掴まれてさらにドキドキしてしまう。
「私不安で…何が起きてるのか訳わからなくて…」
眼元に浮かぶ涙を見て、彼女がよほど不安だったのが分かる。
そりゃそうだろう。目が覚めたら全く知らない場所で同級生の殺害要求をされたのだから。
「お、俺がいるからもう大丈夫だよ」
そっと灰戸さんの背中に左手を回して触れようとすると。
あれ、背中?
「灰戸さん荷物はなかった?」
「え?あの黒いリュックのこと?怖いから開けずに置いて来たんだけど」
「俺も詳しくはまだ見てないけど、ちらっと見た感じ食べ物があったから持ってきた方がいいよ」
「そうなんだ」
「あ、俺が取ってきてあげるよ。部屋より廊下の方が明るいから安心だろ?」
俺が彼女の部屋の指紋認証のパネルに触れると『ブー』とエラー音がして、画面に『認証エラー』と出た。
「あれ?何でだ?」
「もしかして…私じゃないと開かないのかな」
灰戸さんが手を当てるとガチャンと鍵が開く音がして扉は開いた。
なるほど。各部屋は眠らされていた人物じゃないと開かないのか。
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