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まずは右の部屋だ。ここは俺達が眠らされていた部屋の廊下を挟んだ向かいの部屋のはず。
「礼旺!いるか!?」
部屋には明かりはなく廊下の明かりだけが頼りだ。部屋はかなり広いから奥の方は暗い。
長い間使用されてないのか部屋を歩くと床の埃に足跡がつく。段ボール箱や布が乱雑に散らばっていて、暗がりのせいで何度かこけたりつまずいて制服が汚れた。
スマホを懐中電灯として使っても良いけど電池がなくなるのはマズいからなるべく使いたくない。あ、そうだ。このリュックの中に懐中電灯みたいなのはないのかな。
灰戸さんも一緒に探してくれてるけど、物を動かすたびにホコリが舞ってくしゅんくしゅんとクシャミをして辛そうだ。
一旦明るい廊下に戻って鞄の中を物色する。その間灰戸さんには鞄の中にあったティッシュと水のペットボトルを渡して休んでもらった。
鞄の中には残念ながら懐中電灯はなかったけど、簡易トイレや非常食、防寒の毛布や救急セットまであって、意外と手厚いのかと思いきや…。
「げっ!」
鞄の中から凶器も出て来て思わず声が出た。
「どおしたの?…きゃぁ!」
灰戸さんは大きく後ずさる。
「それって…ナイフ…?」
「あぁ…どうやら誘拐犯が俺達に礼旺を殺させたいのは本気らしい」
灰戸さんはビビって声も出ないようなので、俺はすぐ鞄の奥に入れた。
灰戸さんが恐る恐る鞄を見ると、女子だからなのか彼女の私物の鏡と化粧ポーチが入っていた。…なんなんだこの微妙な優しさは…。
俺と違ってスマホは持ってない。
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