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彼女の鞄にも俺よりも小型の果物ナイフが入っていた。
それを震えながら取り出した彼女の手に俺はそっと手を添えて受け取る。
「だ、大丈夫だから!」
全く状況も掴めてないくせに。つい口から勝手に出た。
「俺が君を守るから!」
「ニーナ君…」
潤んだ彼女の大きな瞳に俺の姿が見える。こんな状況なのに俺の鼓動はドキドキと高鳴って彼女の手を握る右手に力が入り…。
――ズキンっ
「イテっ」
唐突に頭痛がした。
「大丈夫?」
「あ、う、うん。ちょっと頭が痛い気がして…」
俺達が来たのとは別の廊下の扉がガチャンと鍵が外れる音がした。
誰か来る!?
「灰戸さん下がって!」
俺は灰戸さんを背にかばうようにして壁際に寄る。
礼旺は見知らぬ場所を俺なしで一人で行動できないからあいつじゃない。
誰だ…。一体誰が―――?
開いたドアから姿を現したのは長身の学ランを着た男子学生だった。
その手には…‥折り畳み式のナイフが握られていた。
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