④コオロギ

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  開いたドアから姿を現した長身の学ランの男子学生の手には、折り畳み式のナイフが握られていた。 ―――ギョッとした。 思わず握った鞄の中に手を入れていつでもナイフを出せるようにする。 学ランは人がいると思っていなかったのか、こっちを見て驚いていた。 「杏菜ちゃん?」 「興梠(こおろぎ)君?」 ……はい? 「え?二人とも知り合いなの?」 俺の質問は無視されて、廊下に入ってくるなり足を止めた学ランに灰戸さんは俺の後ろから駆け寄った。 「なんで興梠君がここに?」 「それはこっちのセリフだよ。こんなところでまさか君と会えるなんて」 …おいおい。なんだよこの雰囲気は…‥。まるでロミオとジュリエットよろしく、二人で会話が進んでいく。 「彼は同級生?」 「そうなの。同じクラスの子で…。興梠君は?誰かと一緒なの?」 「ここに来て杏菜ちゃんに会ったのが初めてだよ」 俺もいるっての! 「…まさかここに集められているのって…」 学ランはそこで言葉を止めたが、灰戸さんは彼の意図することが分かったようで「そんな…」とその後を飲み込んだ。 「え?何?どういうこと?」 俺の質問に二人はこっちを見たが、「いや、まだ“他の奴”に会ってないし考え過ぎかもしれない」と教えてくれなかった。 俺を無視するなっての! 「なぁ!」 大声で話に割って入り、俺は学ランに近づいた。ってかこいつ、もしかして礼旺よりもでかくないか?思わず「身長何センチ?」と聞いてしまい、学ランは「は?193㎝だけど…」と丁寧に答えてくれた。 「あ…そう…」 その返答にさっきまでの勢いが消沈してしまう。こんなときにまで身長コンプレックスを発揮する俺って…。
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