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あやつなぎ。(終)
「赤穂、今日……グラゥンド使ぇ……なぃから…体育館で……」
「わかった、鍵渡しておくな」
「……ぅん……」
頭の上で赤穂(あかほ)先輩と呉(くれ)先輩が話しているが、呉先輩の声はあまりの小ささに殆ど認識できなかった。俺は隣に座る詔(みこと)先輩と目配せし合う。
「なに? 隠密? あの詔先輩の作戦で大成功したってこと?」
ヒソヒソと俺は神妙な面持ちで詔先輩に耳打ちすると笑って「多分な」と頷いていた。
「じゃ……ぁ、ね」
「うん、また、放課後な──」
頬を少し赤らめた呉先輩がおずおずと赤穂先輩を伺うとそこには満面の笑みが待っていて、呉先輩はますます顔を赤らめた。
赤穂先輩が呉先輩の頭をポンと優しく叩いて教室を後にすると、その背中を愛おしそうに呉先輩はジッと見えなくなるまで眺めていて、まるで赤穂先輩の愛犬みたいだった。
「学校でいちゃいちゃしたらダメですよ」
「千暁(ちあき)!! お前はなにを人のクラスで堂々とっ」
呉先輩の腕にちょこんと頭で触るとどうやら今まで俺の存在に全く気付いてなかった様子で驚くほど身体が揺れて反応していた。
全く、二人の世界開催しすぎでしょ。
「良かったね、呉先輩」
「なんだよっ」
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