328人が本棚に入れています
本棚に追加
廊下を歩く途中で予鈴のチャイムが鳴った。廊下を生徒たちが少し慌て気味で歩いていく。
何人かに一人はその手からキラキラした糸を揺らしていて、すれ違いざま、俺は思わずその糸だけを目線で追った──。
目線を前に戻し、左手を翳す。俺の糸は他の人に負けじと輝いて棚引いていた。
満足そうにそれを眺め、大切に隠すみたいに制服のポケットに左手をしまった。糸には温度もないのになぜかポケットの中が暖かく感じた。
──いつか、見えなくなる日が来ると良いと思う。
それでも、相手を変わらず信じていられたら──
見えていた時よりずっと、幸せでいられるだろうから──。
俺は頭の中に大好きな人の顔を浮かべながら頬を緩ませ、一年の教室に早足で進んだ。
最初のコメントを投稿しよう!