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「呉がお前に謝っておいて欲しい、だってさ。結構反省してるみたいよ?」
「フンだ」
「お前だって呉が怒ること言うからだよ。赤穂のデカさ知ってどうしたかったんだよ」
「あんなの冗談じゃん! 先輩の緊張を解いてあげようっていう後輩の優しさじゃん! それをガチで殴るとか酷過ぎる!」
本気で凹んでいるらしく、千暁の語尾は少ししぼんで震えているように聞こえた。
詔は携帯を自分のカバンの上に投げ、落ち込んで拗ねている恋人を後ろから強く抱き締めた。
「お前も本当は謝るタイミング、逃したんだよな?」
「~~っ」
千暁は少し肩を揺らして黙り、小さくコクリと頷いた。たまにこうやって見せる年下な部分が本当にズルイなと、詔は諦めのようなため息をついた。後ろから抱いたまま耳の後ろにキスすると千暁の震えは更に強くなった。身体を反転させ千暁は正面から詔にしがみ付く。どんな顔をしているのか見えなかったが、きっと泣きベソをかいているのだと詔は見当がついていた。暫くの間背中をさすってみたり、ポンポンとあやすように叩いてみたり千暁が落ち着くのを待った。
千暁は詔に回した腕を解いて身体を離し、両肩に手を置いてじっと恋人を見つめた。その瞳は詔が想像した通り赤く、涙で潤んでいた。
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