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千暁の言ってる事は正論だ。何も間違ってない。だが正論だからすんなりと受け入れて理解しろと言うのはまた話が違う。
「千暁は何も悪くないよ。本当にごめんな」
今の詔には千暁を安心させるような上手いその場凌ぎの言葉が見つからなかった。ただ自分勝手な振る舞いを謝罪するしか出来なかった。
「わかんない、わかんないもん。俺、詔先輩が初めてだからわかんない、わかんない!」
小さいこどもが駄々をこねるように千暁はかぶりを振って詔の胸を叩いていたが、詔は口を開いて情けないくらいに間抜けな顔をしていた。
「……ち、あき?」
「なんだよ~!」
「はじ、初めて? えっ?ええ?!」
古いロボットのようなガクガクした動きで詔は千暁の顔を驚愕の形相で覗き込む。
「そうだよ! 俺のこと幾つだと思ってんの! てゆうかわかんなかったの?!初エッチの時! 俺めっちゃマグロだったろ?!」
──そうだったっけな? と詔は思い出そうとするが自分があまりの感動に盛り上がり過ぎて、イマイチ思い出せずにいた。なかなかに最低な男だと自負する。
「じゃあなんで、お前、呉にあんなこと……」
「だって! 呉先輩俺のことめっちゃベテランみたいに思って頼ってくんだもん! 俺もこの間経験したばかりなんです。なんてとてもじゃないけど言える空気じゃなかったよ!!」
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