第一章・橋の向こうに

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第一章・橋の向こうに

今日はいっそう橋に引き付けられる。 とうとう、私は我慢できなくなってしまった。 「行ってきます。」 「いってらっしゃい。」 いつも通り高校へ向かうふりをして、橋に行く。 来てしまった。 いつも行きたかった場所に。 気になって仕方なかった場所に。 帰ろうかという気持ちが少しある。でも、それよりも橋の向こうが気になる。 大きく息を吸い、歩き出す。渡り終えた。誰もいないはずなのに、気配を感じる。 「危ない!!」 そう言っていきなり現れた同い年ぐらいの男の子が私を包み込む。しばらくして話してもらった。 「あの・・、急にどうしたんですか?」 一気に男の子の顔が険しくなる。 「どうしたんですかではない!何を考えている?魔物に取り囲まれていただろう?」 「え・・?そんなもの見えないけど。」 「魔物が見えない?」 不思議そうに首をかしげる。 「まぁ、いいか。名前は?」 「あ・・、蘭です。」 男の子の顔は固まった。 「蘭?」 「?」 「あ、いや。なんでもない。僕は真輔。それでは、またいつか。」 真輔。 何か聞いたことあるような気がするようなしないような・・・。 「ちょっと待ってよ!」 真輔は早歩きで森の中へ消えていく。 「しんすけぇぇ!」 大きな声で叫んだらようやく振り向いてくれた。 「何?」 「あの、私帰る場所が分かんない。」 「あっそ。分からないだけであるんでしょ?僕は帰る場所すらないよ。」 そう言って歩き去ろうとする。 「待って!」 「なんだよ。」 「私の家は橋の向こう。」 「何だって・・・・。お前、わたってきたのか!?」 「うん。」 「死罪だぞ・・・・。橋の向こうから渡ってきたものは死刑なんだ。」 「うそでしょ?」 「嘘じゃない。」 「おいッ!騒がしいぞ。なんだ?侵入者か!?」 「隠れて!」 言われるがままにしげみに隠れた。 発砲音と火薬のにおいが辺りに広がる。」 「ちッ・・。気のせいか。」 警官のような男は去っていった。怖くて、まともに立っていられない。手が震えて、足も震えている。 「だから言っただろ?死罪だと。」 「殺される・・・、ここにいれば殺されるッ・・」 「そうだ。だから帰れ。送ってやる。」 「ぅ・・ん・・。」 突然めまいが襲う。私はそのまま倒れ、立てなくなってしまった。
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