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「娘は気立ても良く、家事も器用にこなせます。
ひとりっ子なので少し自由なところはありますが、
そこも娘の良いところかと」
半次郎が冗談交じりに娘を褒めると、
一同声を上げて笑った。
「駿太、ほんとうにいいお嬢さんだ」
駿太の父親が言った。
「はい。僕もそう思います」
そう言って駿太は、春子をまっすぐ見た。
「春子さん。僕と夫婦になっていただけませんか」
春子は、口元を濁らせた。
そして、まぶたの裏に敬介との日々を思い出した。
もう時間が無い。
諦めかけたそのとき、なにやら女中たちの騒ぎ声がした。
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