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「んなことねえよ」
三郎はムスッとした。
「でも、これでなにもかも無くなっちゃうわけじゃないよ?村にもうまったく帰ってこないわけじゃないしさ!」
「おう、そうだな」
「花のことよろしくね」
「おう」
「ほら笑って笑って!そんなしんみりしちゃって、三郎らしくないわ」
糸は、三郎の背中をポンポンと叩いた。
三郎は、涙が出そうになるのを必死に抑え、スクッと立ち上がり、糸を見た。
「お前がいなくたって寂しくなんてねえから、勝手に行ってこい!お前がいない間に俺はもっとでけー男になってるから、そしたら、、、」
「そしたら?」
三郎は、喉まで出てきた言葉を隠した。
「なんでもねえよ!」
「なによそれ」
糸は笑った。
「よしっ、寒くなってきたし家の中に戻ろ!」
と、立ち上がり、家の方へ歩き出した。
そんな糸の手を三郎は握ろうとしたが、やっぱりその手をすぐに引っ込めてしまった。
ー意気地無しだな、俺ー
三郎は、寂しげな笑みを浮かべ、糸のあとをついて家へ向かった。
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