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すっかり日が暮れ、
糸は、他の女中と共に夕食の後片付けをしていた。
壮介は外で食事を済ませてきたため、夕食時に糸は会うことが出来ず、まだ挨拶を済ませていない。
食器を拭いていると、歳が近いことですっかり打ち解けた“雪”に、挨拶も兼ねて壮介にお茶を持っていくよう頼まれた。
ー壮介様のお部屋は、、、どこだろうー
糸が広い屋敷の中をさまよっていると、
一人の少年が声をかけてきた。
「どうしたの?」
糸は振り返った。
ー夕食の時は見かけなかった方だー
「あの、すみません。壮介様のお部屋はどちらでしょうか」
「ここをまっすぐ行って、右に曲って左に曲がって、一番奥の部屋」
少年は、指を指して教えてくれた。
「ありがとうございます」
「あんた、今日からの人?」
「はい!坂本糸と申します。あの、失礼ですがお名前は」
「敬介。もしかして母から聞いてない?」
「いえ、あの、、、」
糸はごまかそうとした。
「取り繕うのが下手だね。別にいいんだよもう慣れっこだから 」
「え?」
敬介が一瞬悲しそうな顔をしたのを糸は気づいた。
「それ、冷めちゃうよ」
敬介はお茶を見た。
「あ、いけない。では、失礼いたします」
糸は、壮介の部屋へと向かった。
そんな糸の後ろ姿を敬介は見ていた。
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