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「お母様、知っていたのですか?」
「この前、丁度見かけたのです。
あなたが一ノ瀬屋のご子息と仲睦まじく歩いているところを」
縁談を断ってもいいと言おうとしたが、
春子からは予想外の言葉が返ってきた。
「いいんです」
「えっ?」
「私はこれから嫁ぐのです。その方のことはもう忘れました」
春子は笑顔を作った。
「さぁ、楽しみですわ。どのようなお方なのかしら」
春子は立ち上がり、部屋を出た。
残された百合子は、悲しそうに顔を歪めた。
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