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「ということなんだけど、、、」
その日の夜、
糸は育ての親である土井夫婦の前に座り、昼間のことを話した。
糸は、数年前に実の両親を亡くしている。
父親は兵隊にとられ、そのまま帰らぬ人となり、母親は流行病で亡くなった。
その後、同じ村の土井夫婦に引き取られた。
「いい話じゃない!あの一ノ瀬屋さんの御当主様からお声がかかるなんて、それに住み込みで働けるだなんて」
叔母はすごい話しだと喜んだ。
しかし、叔父と土井夫婦の息子で糸と幼なじみの“三郎”はあまり良い顔をしなかった。
「だけどよォ、うまい話言って、糸ちゃんをういいように利用するのが目的なんじゃねぇか?」
「父ちゃんのいうとおり、俺も反対だ。金持ちは悪いヤツがほとんどだ」
「でも、とてもお優しい方だったの」
「お前なぁ「まぁまぁ。糸ちゃんのことなんだから、糸ちゃんに決めさせないと」
叔母が三郎の言葉を遮った。
「、、、私、せっかくお声をかけてもらったんだし、行ってみます」
しかし、三郎はやはり納得のいかない顔をしていた。
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