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「おにーちゃん!」
アリスの声が聞こえ、箸を止める。
気がつくと、周りは俺を見ていた。
「なんだよ」
俺はぶっきらぼうに返して気づいた。
俺、ぼーっとしながらすげぇ食ってる。
その様子をずっと見ていた周りは、優しく笑っていて、何か言いたそうにしていた。
そこで、千代さんが代表で口を開く。
「圭祐、そんなにおいしいかしら?」
「ああ。千代さん、料理上手かったんだな」
俺がそういうと、千代さんは少し黒い笑みを浮かべた。
慈愛から殺意に変ったような錯覚。
「圭祐、『お母さん』」
「………母さん」
俺は少し照れくさくなりながら、千代さんを母さんと呼んだ。
千代さんは満足そうに笑って、食事に戻った。
食事が終わって、男性陣で片づけをし、だらだらと部屋で過ごす。
他愛のない話をして。どうでもいい事で笑って。夜にはまた手料理を食べて。
楽しむというのは、何もどこかへ行かなくては行けないわけではない。
なんていったって、ただ部屋で話しているだけなのに、凄く楽しかったのだ。
ああ。違うな。それだけではない。
俺は、高校の頃に家族を皆失っている。
だから、きっと俺も……愛情が欲しかったのかもな……
そう考えると、アリスの言い出したままごとも、悪いもんじゃないと思った。
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