六、愛情

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「おにーちゃん!」 アリスの声が聞こえ、箸を止める。 気がつくと、周りは俺を見ていた。 「なんだよ」 俺はぶっきらぼうに返して気づいた。 俺、ぼーっとしながらすげぇ食ってる。 その様子をずっと見ていた周りは、優しく笑っていて、何か言いたそうにしていた。 そこで、千代さんが代表で口を開く。 「圭祐、そんなにおいしいかしら?」 「ああ。千代さん、料理上手かったんだな」 俺がそういうと、千代さんは少し黒い笑みを浮かべた。 慈愛から殺意に変ったような錯覚。 「圭祐、『お母さん』」 「………母さん」 俺は少し照れくさくなりながら、千代さんを母さんと呼んだ。 千代さんは満足そうに笑って、食事に戻った。 食事が終わって、男性陣で片づけをし、だらだらと部屋で過ごす。 他愛のない話をして。どうでもいい事で笑って。夜にはまた手料理を食べて。 楽しむというのは、何もどこかへ行かなくては行けないわけではない。 なんていったって、ただ部屋で話しているだけなのに、凄く楽しかったのだ。 ああ。違うな。それだけではない。 俺は、高校の頃に家族を皆失っている。 だから、きっと俺も……愛情が欲しかったのかもな…… そう考えると、アリスの言い出したままごとも、悪いもんじゃないと思った。
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