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『人は何のために生きているのか』 俺は、これが人間が追い求める最大の問いだと思っている。 人の命に無駄なんてない。死んでもいい人なんていない。なんて、綺麗事を言う輩は腐るほどいる。 だが、もし、生まれ出た全ての命に意味があるとするならば、殺人に遭った人は殺されるために生きてきたのか。日々、働きもせず、家に引きこもっている人は、親を悲しませるために生まれてきたのか。 そう考えると、そんな奴らの生なんてものは無駄だと思えるだろう。 なぜ、頑張っている人間が損をし、怠けている人間が得をするのか。 その答えは単純明快だ。 神は、不平等だからだ。 生まれてまもなくで死んでしまう命もあれば、百歳近くまで生きて幸せに死ぬ命もある。 これを不平等と言わずになんという。 そんな理不尽、こらえられるわけがない。 こんな理不尽、不平等を目の当たりにした人間が行き着く先はなんだと思うか。 人生のどん底? 確かに、行き着くだろう。だが違う。 廃人になる? ああ、ドラッグなどで気持ちよくなり、嫌な現実から目を背けるだろう。しかし違う。 最終的な到着地点、それは『死』だ。 それも、殺されたりするわけではない。自らの命を絶つ。『自殺』だ。 世界では、自殺の問題は信じられないほどに存在する。 この国、日本でも、数多に存在する、国を揚げて対策をしている問題の一つだ。 そして、この物語は、俺、氷室圭祐(ひむろけいすけ)が自殺をするまでの、最後の最後に見た、ささやかな思い出の話である。
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