三、目的地はないけれど

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アレから十分ほどのところにファミレスがあり、そこに俺たちは入ることにした。 昼時という事もあり、少し込んでいたが七人すんなり入ることができた。 店の端っこの席で、ソファーのところに、端から俺、アリス、光、耕太。椅子に祭歌、敬一郎さん、千代さんという順になった。 「おにーさん! アリスこれがいい!」   メニューを開いて、はしゃぎながら指差したものは、お子様ランチだった。 なぜ俺に言うのかと思ったが、俺は頭をなでながら頷いて見せた。 「んー私はパスタにしようかなー。耕太は?」 「ぼ、僕? えっと、は、ハンバーグ定食……」   光や俺たちの反応をうかがいながら小声で言う耕太。 どうやら、大食いなことで弄られたりしないかと不安に思っているらしい。 そんな耕太に、そんなことはないというように、光が笑顔になる。 「男の子だもんね! たくさん食べる人って素敵だよ!」   顔を少し赤くしながらそういう光。どうやら、本当に耕太のようなやつが好みらしい。 「そうだよ、男なんだからじゃんじゃん食べなさい」 「あら、そういう敬一郎さんだって食べないといけませんわ」 「おっと、これは一本とられてしまった」 どこから見ても暖かな会話。皆で笑いながらメニューを決める。   一歩引いたような見方だが、楽しそうだった。 「僕は、パスタにしようかなー」 「あ、祭歌さん私と一緒!」 「あら、女の子皆パスタなら、私もパスタにしようかしら?」 「え? あ、アリスも!」   千代さんの悪乗りに、アリスが反応した。 というより、祭歌。女扱いされているのにもかかわらず顔色一つ変えないのか。 「アリス。別に無理してパスタにしなくていいんだぞ」 「で、でも、アリスも女の子……」 「いいっつってんだよ。お前はお子様ランチ頼んどけ」   俺がそういうと、しゅんとしてうつむいてしまうアリス。 周りから、何やってんだといわんばかりの視線が来るが、俺は気にせずアリスの頭を撫でた。 「俺がパスタ頼んでやるから、それ食え」 「え? いいの!?」 俺は頷いた。
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