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「た、助けなきゃ……」
横から呟きが聞こえた。
真っ青な顔で、汗をかきながら、恐れた瞳で、足を震わせながら、耕太は言った。
だが、それだけだった。
助けるための勇気は、恐怖に震える心に負けてしまい、行動を起こそうと前後する上半身は、地面に植えついたような足を動かすことはできない。
だが、それが人間というものだ。
所詮、勇気なんてものは、畏怖の心にに勝てるものではない。
植え付けられたトラウマは、いつまでも背負い続けるしかなく、いざというときに足枷以上に邪魔をする。
仕方の無いことなんだ。
俺は、耕太の頭を少し撫でて、前に進んだ。
「おい。お前ら」
俺が声を掛けると、一斉にこちらに向く。
光は、少し泣きそうになりながら、必死に耐えていたみたいで、俺を見るなり表情を明るくする。
「んだテメェ?」
ピアスやら何やらをジャラジャラつけているやつが俺にガンを飛ばしてくる。
残りの、背の高い金髪と、背の低い坊主も俺にガンを飛ばす。
非常にどうでもよく、こんなときに考えることではないのだが、なぜ目力を籠めて睨むことをガンというのだろうな。
「そいつ、俺の連れなんだが、返してくれねぇか?」
そいつがいなきゃ、最終的に死ぬことができん。
俺は、光を奪還するために、できるだけ平和的な解決をするため話し合いをするが、ツバを飛ばしながら叫ぶこのピアス野郎は、どうやら光が気に入ったらしく、返してくれそうに無かった。
俺は一つため息をついて、後ろにいる耕太に叫ぶ。
「耕太! 警察呼んどけ! 誘拐犯がいるってな!」
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