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耕太、という名前を聞いて光の表情がさらに明るくなる。
そして、こちらの様子を影から見ていた耕太が、あたふたしながら携帯で警察に連絡し始めた。
「ふざけんじゃねぇぞあのデブ!」
警察を恐れた金髪が吐き捨てながら、耕太へ向かおうとする。
俺はそれを足払いで阻止して、金髪についていこうとしたチビも掴み、金髪の上に叩きつける。
二人とも意識があるだろうが、その隙に光はこちら側に逃げてきた。
「後は警察が来るまで、ここにいるか、尻尾巻いて逃げるか、どっちかだな」
俺は少し挑発気味に言った。
だが、相手は殴りかかってくることはなく、「クソが」といいながらどこかへ行ってしまった。
俺は、一度戻って事情を皆に説明し、数分後に来た警察に色々と事情を話して、ようやく自由となった。
その後も遊びつくして、帰ることになった。
「ごめん、皆。心配かけちゃって」
車の中で何度目かの謝罪をする耕太。
それに対し、誰も怒りをあらわにしたりすることも無かった。
だが、コイツの中で一番謝罪をしたいのは、光だろう。
助けなくてはと思いながらも、助けることもできず、怖い目にあわせてしまったと勘違いしているのだ。
だが、耕太は『助けようとしていた』のだ。
それは、誇っていいことだと俺は思う。
しり込みしてしまうことは、言い方を変えれば、自分が事を起こすにあたってのリスクを考えられていることにもつながる。
だから、決して悪いことだけではない。
まあ、ケースバイケースだと思うが。
「気にしなくてもいいんだよ、耕太」
優しく言う光。この台詞も何回も聞いている。
「でも、僕は光を助けることはできなかった」
「だが、俺より後に来て、俺より先に助けに行こうとしたろ?」
俺がそういうと、耕太は黙る。
だが、こう思っているはずだ。『結局は助けられなかった』と。
少し落ち込んでいる耕太を横目に、俺はため息をついて、思った。
コイツは、結構引きずるな、と。
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