六、愛情

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別に、楽しめるのならそれでいい。俺たちの目標としては十分過ぎる。 だが、年齢が比較的に近い光はまだいいとして、大人たちはやりにくさしかないだろう。 この歳でままごとか。 そう考えられずにはいられない。 沈黙が少し続き、不安になったのか、アリスがションボリしながら周りを見る。 「だめ?」 「あ、いや。別にだめってわけじゃないさ」 「そうだよ、アリスちゃん。ただ、僕たちの歳でおままごとかって考えちゃったたけなんだ」 敬一郎さんと耕太がすぐさまフォローに入るが、その物言いは、やると言っているようなものだった。 かくして、俺たちはこの歳でおままごとをすることになった。 配役は、父親は敬一郎さん、母親は千代さん、長男が俺で、次男が耕太、三男に祭歌で、光が長女、アリスが末っ子となった。 三男といわれたとき、祭歌は少し落ち込むかと思ったが、いつものように微笑んでいた。 おそらく、女の子の役がよかっただろうにな。 アリス曰く、特に配役以外の設定などはなく、ただただ家族のように過ごすだけのようだ。 「よぅし! 早速はじめちゃうからね! 耕太お兄ちゃん!」 光が元気に耕太を兄と呼ぶと、耕太は顔を赤くしながらあたふたとし始めた。 アリスは、何をするのかと見ていると、敬一郎さんと千代さんの間に入っていた。 「おとーさん! おかーさん!」 そう言って、二人を見渡す。 「どうしたんだい? アリス。何か楽しいことでもあったかい?」 「まあ。それはいいことね、お母さんに話してくれる?」 さすが子持ちというか、顔を赤くしているところを見ると、相当恥ずかしいのだろうが、子どもへの対応は様になっている。 「圭祐さ……お、お兄ちゃん! ボクたちも、光ちゃんたちのほうに行こっか」 祭歌は、そう言って立ち上がり、テーブルの反対側に向かった。 こっち側で一人でいるのもなんなので、俺も向かう。
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