六、愛情

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敬一郎さんたちのところと、光たちのところのちょうど真ん中に腰かけ、壁にもたれかかる。 「圭祐、貴方もこっち来なさい」 そう言って、千代さんが俺を手招きしていた。 俺は、腰掛けて早々に立ち上がり、千代さんの隣に行く。 アリスの様子を見てみると、敬一郎さんに、学校の話をしていた。 だが、アリスは明るい学校生活を送っていない。 おそらく、自分が送りたかった生活を話しているのかもしれない。 「楽しそうでしょ?」 千代さんが俺に耳打ちをしてくる。 「確かに、アリスは楽しそうに話してんな」 「アリスちゃんもだけど、そうじゃないわ。敬一郎さんよ」 言われて初めて気づく。 敬一郎さんが、アリスの頭を撫でながら、本当の我が子を見るような目で、楽しそうにアリスの話を聞いていた。 少しオーバーにリアクションをとったり、ちょっとしたことでも聞き返してみたり。 その姿を見て、少し意外に感じていた。 「ふふ。圭祐、ここはお願いね?」 一度笑って見せて、千代さんは立ち上がった。 「光ちゃん、祭歌ちゃん。ちょっと、手伝って頂戴」 呼ばれた二人は、少しキョトンとしたが、すぐに立ち上がって千代さんと一緒に外へ出た。
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