六、愛情

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「おかーさんどうしたのかな?」 「んー、なんだろうね?」 不思議そうに扉を眺めるアリスと敬一郎さん。 「飲み物が切れたとかかな?」 耕太が、こちらに来ながら言う。 「いや、飲みもんならまだあったはずだ」 「考えても仕方ない。僕らは僕らで楽しんでおこうじゃないか」 仕切りなおすように敬一郎さんが言う。 そこからは、他愛の話だらけだった。 正直に言うと、ここ数日とあまり変った感じはない。 変ったのは、お互いの呼び方と、アリスがいつも以上に甘えてくることくらいだった。 女性陣が部屋を出て一時間とちょっと。三人はようやく帰って来た。 手には、お盆を持っていて、その上にはおいしそうな料理が乗っかっている。 「厨房借りて、ご飯作ってきたわよ。お昼にしましょ?」 これまでコンビニ弁当やらで栄養が少し偏っていた。 嬉しいサプライズに、俺たちは空いた口がふさがらなかった。 「ご飯だー!」 「ぼ、僕大盛りのやつがいい」 「ふふ。あせらないの。圭祐、厨房にまだ運びきれないのあるから、持ってきて頂戴」 「おう」 「いやぁ、久々の暖かいご飯だねぇ」 「千代さ……お母さんとっても料理上手だったよ」 「そうそう! なんかね! 私なんてお皿出してただけで、包丁は持たないでってお願いされちゃった!」 皆がはしゃぐように話している中、俺は厨房に向かった。 厨房に着くと、そこには女将さんがいた。 茶色い浴衣に白い割烹着を着ていて、艶やかな黒い長い髪と左目の下にある泣き黒子が印象的だった。 おそらく、俺たちがチェックインしたときにいた人だ。 「こんにちは」 俺に気づくと、女将さんはこちらに挨拶をしてきた。
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