六、愛情

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ゆえに、愛が、暖かさが欠落したのだ。 人は、人に依存する。 しかし、愛を向けられなかったアリスは、依存する人間が居ない。 だからこそ、その手にはいつも人形が抱えられている。 孤独の人形劇師。独り笑う道化。 楽しんでくれる人が居ない、笑う人が居ないだけで、アリスという道化は無意味とかし、はたから見ればおかしなやつに成り下がる。 愛の暖かさをもらえなかった子どもの道化は、誰に見てもらうわけでもなく、誰と楽しむでもなく、人形劇をやめなかった。 孤独に疲れたアリスは、幼いながらに自殺を決め、自分のか、親のか、はたまた学校のものか分からないが、PCを使い集団自殺サイトを利用したこの子は、俺たちに出会った。 そして、俺たちと話している間に、暖かさを覚えた。居心地の良さを知った。 そうして、求めたのだ。『愛』を。 家族愛でもいい。純粋な愛でもいい。 この子は、愛情に飢えていた。だからこその、ままごとだったのだ。
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