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アリスのままごとをして翌日。朝起きると、皆はまだ静かに寝ていた。
俺は朝飯を何か買ってこようと、私服に着替えて外へ出た。
コンビニで適当にパンを買い、旅館に戻る。
すると、そこには女将さんがいた。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
挨拶をしてきたので、挨拶を返して戻ろうとする。
しかし、
「日にちは決まりましたか?」
女将さんの、不明な問いによって足を止めた。
振り返ると、女将さんは微笑んでいた。
「どういうことですか?」
俺は、訝しげに聞く。
すると、女将さんは少しキョトンとした後に、口元を軽く押さえて「あら」っと短く驚いた。
「もしかして、ご存知ではない?」
もしかしなくても、知っていない。
相手の思考を知ることなんて無理なのだから。
そんな俺を察してか、女将さんは説明を始める。
「この旅館には、自殺なさるかたがいらっしゃる場所なので」
「っ!?」
俺は目を見開いた。
俺は、自分の住んでいたところから離れた場所にあるここを、あまり知らない。
だから知っているわけがない。
「という事は、閉館って」
「あ、はい。自殺者と警察の方ばかりしか来ないので、一般客がいらっしゃらなくなって」
女将によると、一人の客がこの旅館を利用し、その後自殺をした。
そこへ警察やらが調査をしたりしたら、周りからの評判も悪くなり、逆に自殺志願者からの評判が上がってしまったという事だ。
「ですので、いつなさるか決まったら、お声賭けください。閉めますので」
そう言って、女将はカウンターにすわり本を読み始めた。
俺は、黙って部屋に戻った。
皆はまだ寝ていたが、一人、光だけは起きていた。
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