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「あ、おはよう。圭祐さん」
昨日は一日、お兄ちゃんだったため、少し違和感を感じたが、俺は気にしないで返事をする。
「ああ。おはよう。ゆっくり寝れたか?」
「そりゃあもうばっちり! 光ちゃんは元気に―――」
「なぁ、光」
元気に言う光の言葉を遮って、俺は言った。
「そろそろ、そのキャラやめねぇか」
「え?」
光は一瞬固まった。
海に言った日。
パーキングエリアで祭歌と話た時。
俺は、光の楽しみ方について考えた。
それは、そこからもずっと続いてきた。
『楽しむ振りを楽しむ』光。
楽しそうにテンションを上げることによって、コイツは周りを楽しませ、それを見て自分すら楽しいように錯覚する。
そうすることで、過去のことを忘れるように、隠すように。
コイツ自身、パンドラの箱なのだ。
その中の災厄という名の過去を封じ込めるために、楽しむという鍵をかける。
そうすることによって、自分の暗い部分を出そうとせず、隠す。
「どうして?」
俺の真剣な目に、光は俺に近づきながら問い掛ける。
それは、いつもの元気に明るい光ではなく、むしろ逆。暗く落ちているような表情だった。
「私は、これで十分楽しんでいるのに。誰にも迷惑かけてないのに、貴方は何でそんなことを言うの?」
よってくる光に、俺はつい後ずさる。
今までの暗い部分が、すべて出てきているようだ。
空いたままのドアから、そのまま廊下に出て、壁に背をつける。
逃げ場はない。進む道もない。
どうやら、最大の地雷を踏んでしまったらしい。
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