六,五、楽しませ方

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光は、俺の目の前に立つ。 誰かを殺しそうだとか、幽霊みたいで怖いとか、そんなものじゃない。 『ただただ恐ろしい』 光を失ったような暗い瞳。 射殺すような冷たい視線。 すべてを失ったような暗い表情。 無駄な力を抜け、垂れ下がる腕。 確かに、それでもゆっくりと近づいてくる足。 そのすべてが、なぜか恐ろしく感じてしまう。 「圭祐さん、楽しいって何?」 光からの問いかけ。俺はその問いかけに答えられなかった。 楽しいこと、楽しみ方などは人それぞれだ。 だが、コイツは今そんな返事を待っていない。 コイツは、俺にとっての楽しいことを聞いてきている。 「私は、私の楽しいが良く分からない。楽しいって何?」 「...しらねぇ」 俺は、精一杯気張って返事をした。 「確かに、楽しみ方はそれぞれだ。お前がアレで楽しんでんなら、別にいいと思う」 俺の返事を聞いて、光は眉をピクリと動かした。 その目は、「じゃあ、何であんなこと言ったんだ」とでも言うようだった。 「堅苦しいのは無しっつー事で、敬語もやめて名前を呼び合った。だが、堅苦しいのも無しなら、水臭いのも無しだと思わねぇか?」 理にかなっていない、即席の自論。 それでも、俺は続けた。 「俺は、お前にも心から楽しんで欲しい。だから、素を出せと言ったんだ。相手を楽しませることだけを考えて、楽しんでいると錯覚すんのはやめろ」 言い切った。俺の思いを。 しかし、光は相変わらずあの視線で俺を見る。 瞬きもせずに真っ直ぐ俺を見る。 だが、数秒してうつむいてしまった。 そして、 「別に、楽しませられてない」 ポツリ、呟いた。
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