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「……なんだ? これ?」
ある休日、何となく部屋を片付けていて見つけた見覚えのない物。
桜色の糸を編んだけの輪っか状の物。絹糸みたいに光沢があり、桜の花をかたどった小さなガラス細工のような装飾が付いている。髪ゴムっぽい太さや大きさだけど、ゴムじゃないのか引っ張っても伸びない。いや、そもそも俺は男だから結ぶほど髪を伸ばしてないし、例え結ぶほど長くてもこんな可愛らしい物は恥ずかしくてつけられない。
そんな訳で、俺には必要ない物だしゴミ箱行きだな。と、人差し指をクルクルと動かし、指先に引っ掛けていた桜色の輪っかを放り投げようとした。
「……あれ?」
回転する度に光を反射して輝く小さなガラス細工。その小さな桜色の輝きに導きだされるみたいに、ふっと頭の端に何かよぎった。動いていた指先が止まり、回転を止めた桜色の輪っかが手の甲に垂れ下がる。
――これは、……だよ。
同時に、男とも女ともつかない声が頭の中に響いた。
「あ……。これって、もしかして」
桜色の輪っかをじっと見つめ、脳裏に浮かぶ微かな幼い頃の記憶を思い出していった。
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