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11月の式は表向きでいいと言い、あとは二人で考えなさいと言ったクラビが、新年の一の宮関連の噂の真偽を確かめに御所にくることはなかった。
だから、医務室の婦長に伝言を頼んだのか。
ともかく。
3月の春休みを利用して、クラビ主催のお妃教育が行われる。受講者は、貴夢ちゃんとあたし。
第一日目。
今日は、箏(そう)。
箏は苦手だって、笛ならいくらでも……ごめんなさい。うそつきました。笛はまだましなだけです。
爪をつけて、まずは、皇妃から。
実は、貴夢ちゃんがいなかったら、ごねたんだけど。
こんなチャンス二度とない。
はわはわと興奮する。
「では、皇妃からどうぞ」
クラビが正面で、促す。
爪をつけた貴夢ちゃんが、ゆったりと構えて、ゆるやかな調べを奏でる。
このまま、ずっと、聞いていたい。
と思ってても、そんなことは貴夢ちゃんは望んでいないので、アンコールはなく、あっさりと終わる。
「さすが、皇妃」
クラビの満足な顔。
「私から申し上げることは、何もございません」
クラビの顔がこちらに向かれる。
「では、宮妃候補、どうぞ」
きた。
貴夢ちゃんみたいな優雅さはないが、何とかこなす。
ふう。
終わった。やり切った。がんばった。あたし。
今日は自分を誉めよう。
うん。
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