1話 YUTA -1

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 ピピピピ、ピピピピ、ピピッ。  規則正しく鳴る携帯アラームをいつも通り3回目で消す。  のろのろと体を起こす。やけに体がだるく重たい。 (風邪でも、ひいたかな?)  身を起こす自分の手が、やたら皺くちゃで干からびた枯れ木のようだ。  両手を広げて、手の甲と平を交互に眺めて、眉を寄せる。 「なんだ? このシワシワの手」  喉もカラカラなせいか、声も異様にしゃがれている。 (やっぱ、風邪かな)  喉に手を当て、あーあーと声を出しつつ、とりあえず腹も減ってるしと、2階の部屋から階下のキッチンに向かう。  膝関節が痛み階段を下りるのも一苦労だ。  ふらつく足取りでキッチンに入ると、ちょうど料理をしていた母さんが振り返って 「ひっ!」  と言って、菜箸を取り落とした。
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