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プロローグ
いつもならあの角を曲がったところに・・・
下校時に寄り道をして、ごく普通の住宅地を通る。
見えたのは黄色く丸く、そして浮いている物体。
風の影響は受けていないはずだが、少し揺れている。
僕は指を引くとパックマンを体側へ引き寄せる。
窮屈そうにうごめくパックマンから指を外すと、貯め込んだ力を一気に解放するように直進した。
パクパクっという風に聴こえないでもない馴染みの電子音を、それには不釣り合いな少ししなびた住宅地に響かせ、パックマンはドットを10個丸呑みした。
それでも余った力を殺すようにドリフト風にターンを決めて、こちらへ帰ってきた。
このゲームはRRパックマンと言う。
RRはリアルロールの略称でダブルアールと読む。実際の世界を転げ回るという意味らしい。
スマホゲームのひとつで、それまでにあったGPSを使用して特定の場所にアイテムやモンスターを配置したゲームとは一線を画し、カメラの映像から道と壁を読み取り、実際の景色の中でキャラクターが走り回るという特徴がある。
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