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「昨日ね、マサくんと会ったよ。二人で遊んだの」
「ふーん、あっそう」
つまらなそうな顔をしたケンちゃんはもう新しい氷を手に取ろうとしていた。
私は、口を突きだして持っていた氷をサイダーに触れる様に氷と氷の隙間に入れた。
くいっと水位がまた上がる。
「俺、好きな子が居る」
ケンちゃんの言葉に、二人は目が合う。
ケンちゃんの焦げ茶色の髪の間から、綺麗な瞳が垣間見える。
「ほー……」
「お前、おっさんかよ」
内心驚いたけど、いや驚いたから、出てきた言葉がそれしかなかった。
そんなことは言わずに、私はケンちゃんが入れた氷を見た。
グラスの中は氷とサイダーがカフェなんかで出て来る、程よい割合になって入っている。
暖房の熱風で、砕かれたロックアイスがとろんと汗を掻いている。
グラスの中は程よいのに、私たちはちょっと暑くて、そして、グラスの中身よりずっと緊張している気がした。
流れて来る音楽も陽気なのに、私たちはちょっとシリアスな顔つきになって、互いを見ている。
私は氷を掴んで、垂れて来る水分を感じながら思い悩む。
そして、口火を切る。
「私、ケンちゃんの秘密を知ってる」
ケンちゃんはちょっと黙って、視線をグラスに落とすと「何を知ってるのか知りたい」言い切った後に、私に視線を上げた。
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