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嘘のような本当の話。
言われれば、どうして気がつかなかったのかと自分でも疑問に思うけれど、本当に気がつかなかった。
ケンちゃんは小さい時からケンちゃんで、それ以外の何者でもなかったから。
ケンちゃんの肌は本当に白くて、髪の色も日本人とは言い難いブラウンだし、目の色だって優しい琥珀色なのに。
暗い表情だったケンちゃんが小さく笑う。
「気がついてた。カスミってさ、俺に興味なかったし」
「だって、目とか隠してたじゃん」
私が言い訳しようとすると、ケンちゃんが氷を指さして、早く入れろと催促する。
私は頷いて、氷と氷の隙間に入るような小さな氷を見つけ出して、それをグラスに入れた。
それを待ってケンちゃんは言う。
「髪は切るし、もう隠すつもりはないんだ」
何を?
そう言うことは言わないし、私もあっという間にケンちゃんがグラスに氷を入れたから、聞きはぐってしまう。
ケンちゃんは顎でしゃくって、私の番だと促すから、私は何も言わずに次の氷を選ぶ。
ケンちゃんが大きな氷を入れるから、すでにグラスの縁に到達しようとしているサイダーが、泡を外に放出している。
飛ばされた泡が、テーブルにぽつぽつ落ちた。
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