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私たちの前のグラスに、ぎりぎり溢れないで耐えているサイダー。
私たちも、いつになく緊張した空気に身を置いている。
ケンちゃんと私は幼馴染で、私はケンちゃんの気持ちを知っていた。
私たちはずっと近くで、でも触れない距離を保ってきた。
「まだ続ける……?」
ケンちゃんは半分伏せた瞳で、私の唇を見ていた。
ゲームを?
幼馴染を?
私たちは溢れないで、ずっとうまくやってきた。
でもグラスのサイダーは泡を飛ばし、小さな泡は既に溢れて、外へと飛び出している。
あと、一歩。
ぎりぎり溢れないサイダー。
ケンちゃんが静かに身を乗り出して来る。
私とケンちゃんの関係は、グラスのふちを越えようとしている。
私もテーブルに身を乗り出した。
テーブルが揺れて、グラスのサイダーが耐えきれなくなって、溢れた。
終わり。
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