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私の部屋なのに、ケンちゃんの好きな曲が流れ始める。
ケンちゃんは音楽が流れると体を縦に小さく揺らし始めた。
「また、ピアス増えた?」
「ん? 見んなよ、エッチ」
「隠してるなら開けなきゃいいのに。普段髪でほとんど見えないんだし」
ケンちゃんはくるっと向きを変え、その時同時にかちゃっと暖房が点いた音がした。
「髪は切るよ」
「そうなの?」
ケンちゃんはなんていうかマッシュルームみたいな髪型をしている。
今まで何度言っても切らないと頑なだったのに、急に切るとか言い出すから素直に私は驚く。
「色々見えないし」
「前髪ぎりぎり目にかかってるもんね」
「まあね。よし、やるか」
そう言って、テーブルにあるロックアイスに手を伸ばすと、袋を開ける。
がしゃっと氷たちは形を変えて音を上げる。
ケンちゃんは音楽に合わせて氷たちを楽し気に砕いて行く。
飛び散った氷は温まりだした部屋の温度に耐えかねて、直ぐに本来の姿、水に戻っていく。
二人は向かい合って座り、私はケンちゃんが買って来たサイダーを開けて、グラスに注いでいく。
ぷちぷちの気泡がぴょんぴょんと飛び跳ねて、ほんのり甘い香りがした。
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