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【マジックアワー】
なんだか空が高かったから
なんとなく、
いつもと反対向きに池の周りを歩いた。
同じ景色が違って見えるから不思議。
L Rが違うだけで知らない場所に来たみたい。
いつも右側にあるベンチが今日は左側に。
その上に猫がいる。
そっと近づいた時に、
同じように近づいてきた人がいた。
私より先に、
彼と私に気がついた猫は行ってしまった。
ふと、視線があう。
「かわいかったですね」
彼が言った。
「そうですね」
いつもの私なら
知らない人にそんなこと言えない。
「座りますか?
せっかく彼女が譲ってくれたんだから」
猫が行ってしまったベンチを見て
彼が言った。
「彼女なんですか? 彼だと思いました」
いつもの私なら、きっと座らない。
「いや、なんとなく」
その人は頭の後に手をまわして
恥ずかしそうに笑った。
少し話した。
だいたい、日曜のこの時間に散歩するって。
私と同じ。
反対周りをしなきゃ、
出逢わなかったんだろう。
空の青にオレンジが混ざる。
マジックアワー。
水面にキラキラ光の星が降っている。
〈 fin 〉
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