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週末、その彼女からメールが来た。
『ボク好きな子いるんだけど』
そう返したけど、それに対して来た答えは、
『あたしも彼氏いるし。じゃあちょうどいいよね』
だった。
何が丁度いいのかは置いておいて、結局僕は日曜日にはその美形と会って16歳の若さをぶちまけた。
思った以上に、彼女は良かった。
その次の週、朝のタイミングがバッチリ合って、廊下でまた森川さんを見付けた。
もの凄い嬉しくなってくる。
やっぱりボクの心をときめかすのは、森川さん以外にはいない。
ボクは小走りになって、彼女に声をかけた。
「おはよう、森川さん」
「……おはよう……」
森川さんはちょっと怪訝な目でボクを見た。
いつも怪訝そうだったけど、今日は特にそれを感じる。
何か変だなって、ボクはちょっと思った。
森川さんの事がいつも気になるから、彼女の気配の違いは敏感に分かる。
「お前に言おうかどうしようか迷ったけど」
教室で、稜二が珍しくマジな顔で、ボクに言ってきた。
遊び仲間でクラスが一緒なのは稜二だけだ。
窓際の隅の方で、ボクらは話してた。ドア側の反対の方には、森川さんがマジメそうな友人たちと話をしてる。
「昨日綾崎が、オレのとこに来てさ」
「……」
ボクは黙って稜二の話を聞いた。
「『どうせ森川の方が、海都の事好きなんでしょっ』
とか勝手なこと言って去ってったんだけど」
「………マジで?」
頭の上っかわに、モヤモヤとグレーの雲を感じる。
今日の森川さんの態度………。
なーんかイヤな予感がしてくる。
無意識に目を伏せた瞼の裏に、『前途多難』の文字が読めた。
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