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「森川、ってさー…、海都のこと好きなのー?」
「は?」
1年の時一緒のクラスだった、綾崎さんに急に廊下で呼び止められた。
私は綾崎さんの言ってる意味が全然分からなかった。
「カイト、って……何?」
私は本当に分からなくて、真顔で聞き返してしまった。
綾崎さんはすごく可愛い顔をしているんだけど、私がそう言うとその顔をもっと輝かせて嬉しそうに笑い出した。
「何でもない、…やっぱ稜二ってダメだわ。ごめんごめん、森川さん」
そう言って、私の肩を叩いて行ってしまった。
「何のこと……?」
私はぼうっとしたまま、教室に戻った。
『カイト』が何の事だか、すぐに分かってしまった。
「海都!お前貸したDVD返せよ!」
後ろの席から大声で末永くんが怒鳴ってる。
『カイト』って、……杉下くんの事だ。
自分でもボケてたなぁって思う。
そう言えば杉下くんって、カイトって名前だったんだっけ。
どうして綾崎さんにそんな事言われたんだろう。
確かに杉下くんはカッコいいし、感じも悪くない。
だけど、挨拶以外ほとんど喋ったこともないのに。
(怖いなぁ、綾崎さん…)
さっきだって、呼び捨てで呼ばれたし。
末永くんにしても綾崎さんにしても、そして杉下くんにしても、みんな私なんかとは違ってすごく派手な人たちだ。
末永くんたちのグループは、各クラスから目立った子たちばっかりが集まってた。
噂に聞くところによると、他校の子とかナンパして、で…、やっちゃってるとか聞くし…。
あの子たちの仲間は、男の子も女の子も何だかギラギラしてるような感じだし…。
(あんまり、関わらないようにしよ)
それにしても、どうして綾崎さんにあんな事言われたんだろう。
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