河津桜を君と

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君と僕の出会いは、当時の常套手段である“お見合い”ではあったけれど、それでも僕は、8歳年下の可愛い君に出会えてラッキーだったと、43年経った今でも心から思う。 昭和12年、東京生まれ。 戦争の影響で疎開した先でいじめに遭い、餓死寸前で東京に戻ってきた。 翌々日には東京大空襲に遭い、焼け野原を目にした。 終戦後は、中卒で役所に働きに出たけれど、思うように給料も貰えず、学歴社会の壁を感じて大学を目指す。 働きながら夜間高校に通い、ようやく大学受験にこぎ着けたのに、本命の東大受験日、高熱を出した。 どうにか第二志望の大学には入ったが、野暮ったい見た目と頑固な性格が災いして、覚えたものは煙草と貧乏旅行くらいで。 女関係は無縁だった。 大空襲で僕をかばい背中に火を背負った母親の側にいたいと思っていたから、それで良かったと思う。 大学を卒業後は、引っ越したいという母親に付き添って東京を出た。
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