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とある森の深層部、年齢一五歳を向かえた見習いの若き竜喚使達は称号(マイスター)を取得すべく、この歳をむかえた彼等は魔術を教わっていた。その中でも、最も周りとは違う発想を持っていた青年クライトは、自身の魔力の質量を図ろうと大木に向けて魔弾を撃つ。
赤い火の玉が、ゴオォッ、と燃え上がる音を立てて其れは直線を描きながら木々を一瞬にして灰にしてしまう。凄まじい威力だと、魔術の講師は驚かざるをえなかった、まるで言い方は何だが魔族並に有り余る魔力の質量を彼は持ち合わせているのだろうか。
「クライト、凄いなっ、やはり見込んで間違えは無かった。お前には竜喚使の才能があるぞ!」
「ありがとうございます、父さん」
嬉々とした笑みを浮かべて、クライトは実父である講師にお礼を言った。すると周りで特訓をしていた見習い竜喚使達は盛大な歓声を上げて、皆が彼を祝福する、無論灰になり辺りに散らばった木片を片付けるのは後に彼等なのだが。
そんな事さえ当たり前の様に、講師とその息子であるクライトを見習い達は認めている。実力が全ての、この世界で生き抜くには多少の配慮だって必要だからだ。弱者より強者を選ぶのは、何れにせよ上に立つ者には欠かせないであろう存在だった。
蹴落とす機会を伺うより、媚うって王の側近でいるのも、生活には苦労はしないだろうし。何よりも、クライトは講師の一人息子、言い変えれば彼は見習い達にとっての王だ。逆らえばどんな目に合わされるのか、内心焦っているのが本音なのだろう。
「やっぱ、すげぇな、クライト坊っちゃんは!」
「その呼び方は止めて下さい、気軽にクライトで良いですよ」
『はははっ、そうかそうか。よし、もう少し練習したら、飯にするか!』
その講師の言葉に、先程クライトを坊っちゃんと呼んだ青年は苦笑を浮かべて呟く、まだ鍛練を行うんですかと。つい本音を漏らす彼を、周りは青ざめた顔で見遣る、否や笑顔のままに拳を指鳴らしする男の姿が視界に映った。
『ヴァニル、お前は竜喚使になるべく、此所に来たんだろ。なら、日々鍛練を続けるのは、称号を手に入れる為。違うか?』
「そうっすね、異論は無いです。けど本当にこの中で坊っちゃんを除いて、竜喚使に成れる奴なんて居るんですかね?」
『ヴァニル!お前はなんて事を言うんだ、初代竜喚使リゼッタ様のお気持ちを考えろ。あの方にはお考えがあるんだ』
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