1:探し者

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 ある者は指に火を灯し、ある者は触れた水を浄化する。またある者は全身を光らせ、その「発光術」を結晶に宿す。行使する術、宿らせる術は多岐に渡り、宿らせる媒体も布、木材など、鉱物に限らない。術と、術を宿した道具はあらゆる形で生活を助けている。そんな術社会の一端が、量や質を選ばなければ子供の小遣いで手に入る結晶だ。 「術、か」 「まぁ、術なしでも赤いものはよく売れるよ。また街でいろいろ見てみるといい。アクセサリーにも街の飾りにも、赤が目立つようになる」 「そういえば、さっきの女の子も」 「赤い帽子だったね。今年の流行。お買い上げは青い布だったけど」  話をしながらも作業は進み、トリズの担当分の補充が終わる。その間に、セニーは黄、緑の補充を終えていた。どちらも半分ほど減っていたので、合計してトリズの四倍ほどの速度で終わらせたことになる。  多少は慣れてきたはずなのに、この差。思わず手を見比べるトリズに、セニーは立ち上がりながら言う。 「コツは、もっと怖がらずにやること。ちょっと強く扱ったくらいじゃ割れないよ、ウチの商品は」 「そうなのか。……いや、でもさっき」  コツと真逆の忠告を思い出してトリズが問い質すも、セニーは笑う。 「いや、あれくらい言っておいたら面白いかなって」 「お前っ」 「流石に木箱の中でガチャガチャやると割れるからさ、仕舞うときは気を付けてよね」  セニーは立ち上がり、エプロンについた埃を払った。 「……わかりましたよ」 「じゃ、よろしく」
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