現実

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 真っ暗で何も見えない、何も聞こえない、何も考える事ができない死体が、土に押し潰され、バクテリアに食べられ、ドロドロに腐ってゆく。  今同じ部屋にあるお姉ちゃんの死体も、もう腐り始めているのかもしれないと思うと、今までに感じた事のない匂いが部屋中に漂ってきているような気がした。  希薄だった死のイメージが、ゆっくりとした重い恐怖と、とめどもない嫌悪感になって僕を押し潰そうとする。
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