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初めてのプレゼント
【リクエスト/冬の花】
近所のフラワーショップに目が留まった。
シクラメンやポインセチアなど、クリスマスをイメージするような花が並んでいる。
いつもの通り慣れた道なのに、どうして今まで気づくことがなかったのだろうか。
そんなに、生活に追われていたのだろうか。自覚、なかったな……。
フラワーショップを見つけたことで、家で帰りを待つ、妻の里穂のことを思い出す。
アイツは、花を育てるのが趣味だった。趣味が高じて、花の農家になりたいと思って、園芸を学ぶ学校に行っていたんだとか。
そのときに、シクラメンの栽培をしていたと言っていたような気がするな。
「買って、みるか」
結婚したらガーデニングをしたいと言っていたのに、結局マンションに住んでいるから、切り花を飾ることくらいしかしていない。
鉢植えでもあれば、少しは気が紛れるかもしれない。
聞いてみれば、近所であれば宅配もしているということで、届けてもらうことにした。
直接渡すのは、気恥ずかしいから。
イヴの日がちょうど忙しくなり、早くには帰れないこともあって、埋め合わせにもなるだろう。
「メッセージカードつけますか」
イベントだけのサービスなんです──その言葉に惹かれて、メッセージを書く。
大したことは書けないし、自分は気が利く方じゃないから、どこまで伝わるかは分からないけど。
『里穂、いつもありがとう』
その言葉だけ。感謝しているのは本当だから。
これが届いて、もし喜んでくれたら、今度はベゴニアでも買ってみようかと思う。
仕事が忙しくなってしまうイヴの日が憂鬱だったのに、里穂のことを思うと、少し心が軽くなった気がした。
リクエストしてもらった冬の花で一番に浮かぶのは、シクラメンです。
クリスマスシーズンになると、近所のスーパーでも売り始めるくらい定着しています。
今回は詩ではなく、ワンシーンノベル的なイメージで書いてみました。
割と私の小説には、こういうのが多いので、割と書きやすかったのですが、こちらの作品も気になったところを少しではありますが、直しています。
改めて書き写してみると、気になる気になる(笑)
あまり変わってはいないんですが、気持ちの問題なので。
この作品を書き終えたのが、12月23日だったそうです。
とりあえずクリスマスまでに書けてよかったと思っていたようですね。
当初は椿とかアロエとかも考えていたようなのですが、シクラメンにしてよかったと今なら思います。
ちなみにこの話には後日談がありまして。
鞘瓜さんのプレ本の方で、続きが読めます。
そのときには、「彼」の名前も明かされますので、楽しみにしていてくださいね。
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