第六章 封鎖された学園

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「ってことは、森野、日曜日が空いたってこと?」  生き返ったように新田の声が弾む。さすがはサッカー部の点取り屋と言うべきか。こぼれ球は見逃さない。 「あんた、今その話をする?」  金本がハイエナを見るような視線を向けると、新田が「え? いいでしょ」と開き直る。  横で二人がやり合う声を聞きながら、智也は隣の席にいる少女の異変を感じ取っていた。遅れて金本も気づいた。友達の顔を心配そうに覗き込む。 「佳織、どうしたの? 大丈夫?」  さっきまでの明るさが消え、顔に暗い影が落ちていた。眉尻が下がり、唇を引き結んでいる。 「ごめんなさい。怖くなって……。帰国のとき、両親も心配していたの。日本では爆弾テロ事件が起きているから大丈夫かって。去年の事件で私たちと同世代の高校生がたくさん亡くなったんでしょ?」  自分が実際に行く予定だったイベントで爆弾予告があり、身近に恐怖を感じたのだろう。悪寒がするかのように制服の細い体を抱きしめている。
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