817人が本棚に入れています
本棚に追加
/643ページ
「前とはちょっと見える景色が違うだろ」
背後から声をかけられ、窓辺から外を見ていた少女――永田かえでは振り返った。
背の高い少年が、教室の入り口に立っていた。
フード付きの紺のダウンジャケットを着て、開いた胸元からは、白い薄手のニットがのぞいていた。細めのベージュのチノパンが長い足を包んでいる。
「土井くん?」
元一年三組のクラスメイト、土井義彦が立っていた。軽くワックスでスタイリングされた清潔感あるショートヘアは、坊主頭の中学生時代と印象を異にしていた。
「永田さん、久しぶり」
チノパンのポケットに左手の親指だけを入れ、少年が右手を挙げた。
「なんか……印象が変わっちゃって……」
歩み寄ってきたかえでが、まじまじと顔を覗き込む。
最初のコメントを投稿しよう!