第三章 爆弾同窓会

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 額に垂れた髪の毛が、顔の片目を隠し、高校一年の少女とは思えないほど、ミステリアスな雰囲気を漂わせていた。 「そう? 恥ずかしいわ。なにかツッチーと話してるみたい」  あの事件で亡くなったクラスのムードメーカー的な存在の少年を思い出す。こちらが赤面するのも構わず、「永田さんって、やさしいね」とてらいもなく人を褒めてきた。 「ツッチーか……今も一年に一回、野球部のやつらと草野球をするんだ。土田杯って名づけてね」  あの事故で亡くなった土田と土井義彦は同じ野球部だった。 「土井くんは高校でも野球をやっているの?」 「いや……もう野球はやめたよ。草野球も応援しに行くだけさ」  右手に目を落とす。そのときになってかえでは、少年がずっと黒い革の手袋をしていることに気づいた。 「ごめん……気づかなくて」  土井義彦はあの事故で右の手首を失った。あれから三年もの月日が経ち、つい忘れてしまっていた。
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