第三章 爆弾同窓会

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「なんで見てたのよ?」  日菜が怒ったように訊ねる。 「だって、やじゃん。誰もいない教室でぽつんと待つのってさ」  悪びれた風もなく慎一が答えた。この少年には、さみしがり屋の一面があった。友達が多いのはその裏返しでもあった。 「慰霊碑の方に行ってるんじゃないの?」  日菜が言った。旧校舎の跡地にあの事件の犠牲者を弔う慰霊碑がある。 「誰か電話してみれば?」  中江慎一が提案すると、森川が首を振った。 「誰も番号を知らないんだってさ」 「マジ?」   各自がスマホの電話帳やインスタントメッセンジャーの送受信履歴をたどり、新堂拓己の連絡先を探そうとしたが、どうしても発見できなかった。  話し合いの末、みんなで探しに行こう、という結論になったときだった。  みんなが入ってきた前方ではなく、教室後方の扉が静かに開いた。
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