第三章 爆弾同窓会

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 肌色の二本の義指(見た目には完全に本物の指そっくりだった)を、板前さんが握った寿司のように机の上にそろえる。 「山ちゃーん」  日菜が最後に残った水絵にいたずらっぽい笑みを向ける。  何事につけて面倒くさがる少女だったが、バイト代五千円を出してくれるスポンサーに気を遣ったのか、椅子に座ったまま、右足のゆったりしたデニムをめくった。足を持ち上げ、膝から下をえいやと抜く。  立ち上がろうとする水絵を、近くにいた土井義彦が手で制した。義足を受け取り、バケツリレーよろしく持ってくる。  机の上に、手首、足、指、腕、眼球が並んだ。  皮膚の質感も、肌の色味も、筋肉の隆起も、人体そっくりだった。伸びた爪や体毛までリアルに再現されていた。ちょっとした義肢のショールームだった。
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