第六章 封鎖された学園

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「大丈夫だよ、森野さん」  沈んだ空気を、智也の声が強引に引っ張り上げた。 「この学校はフツーの学校なんだ。テロの標的になるようなものが何もないよ。野球もサッカーも全国大会に行けるほど強豪校じゃないし、東大に毎年、何人も合格するわけじゃない。いじめもないし、裏サイトとか聞いたことないしね」  みんな第一志望で入ってきたので屈折した感じがない。ひとクラスごとの生徒数が少なく、教師の目も行き届いている。  立てこもり事件を起こした東京の高校は、都立を落ちた人間が滑り止めで受けていた。寄付金の過多で生徒間に差別があったとも噂されている。校則もかなり厳しく、人間関係はいびつだったらしい。 「待て待て、野球部は去年、県でベスト16までいったぞ」  黒王子・山崎がむきになって否定すると、金本が鼻で笑った。 「で、コールド負けでしょ? 浮かれた校長が文化祭の費用を削って生徒を応援に駆り出したから、その年の文化祭は規模縮小。今も野球部は恨まれてるの忘れないでね」
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