第六章 封鎖された学園

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 絶叫しながら、長いパイプの棒を振り回しはじめた。  金具のついた先端で顔面を横殴りされる男子、頭から血を流してうずくまる女子……教室は阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄と化した。  いじめにかかわっていた、かかわっていないは関係ない。まさに無差別テロだった。  キレたいじめられっ子はいちばんヤバい――。  それが十七年の短い人生体験で得た智也なりの考えだ。男も女も、子供も大人も、不良かどうかも関係ない。恐ろしいのは普段おとなしい人間がキレたときだ。そして、それはいつ、どんなタイミングで爆発するか予測できない。  だから、彼の人生のモットーは、君子(くんし)危うきに近寄らず。電車のホームでは絶対に先頭に立たないし、ヤバい目をした人が寄ってきたらすぐ逃げる。おかげで事故や命の危険にさらされることは一度もなかった。 「ねえ、中井君はどう思う?」  急に声がして、智也は我に返った。
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