第六章 封鎖された学園

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「え……いや……どうって言われても……」  もともと智也は気の利いた受け答えが苦手だ。その上、森野さんを意識して緊張していた。 「もー、男の子でしょ。嘘でもいいから、女の子を守るって言いなさいよ」  金本があきれ顔をする。隣にいた森野さんが目を伏せた。なんだか彼女にも失望された気がして、智也は唇を噛んだ。  自爆テロ犯と教室に閉じ込められたらどうするかって? 勇気を振り絞って立ち向かうのが正解なのか? でも、さっきガマが言ってたじゃないか。爆弾の前には人間なんてただの肉塊だって。  この少年は、生来まじめな性格なので、適当な嘘が言えない。 「は、話し合うよ!」 「話し合うって……犯人と? 何を?」  金本の片方の眉が持ち上がる。左右の眉位置のズレが、二人の会話の擦れ違いを表していた。
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